フィリピン見聞録1日目

6時半にふと目が覚めた。昨夜音楽を聞きながら寝たせいかイヤホンが絡まり、首の辺りが少し痛い。
中園さんも目が覚めたようだ。
改めて荷物を整理し、航空券の確認をして7時発のシャトルバスに乗り込む。

今日も例に漏れずバスで面白い話を聞いた。今日は宗教について。(本来の)ブッタの教えは科学的、哲学的で素晴らしいが救いがないから広く流行らなかった…とかフィリピンのカルトキリスト教の問題だとか、、、

宗教学は人類学や、社会学、はたまた自然科学まで、あらゆる切り口から見ることが出来るので知れば知るほど面白いらしいが、なるほど、何となく硬いイメージのあった宗教学も捉え方によっては面白そうだ。

そうこうしているうちに関西国際空港に到着。念の為マスクを装着し、まず、中園さんがあらかじめ空港に送っておいた巨大なダンボールを取りに行った。

ダンボールの中身は寄付された子供服、靴、カバンと僕が教える予定でいるスポーツ「フレスコボール」のラケットとボール。

フィリピンの子供達に渡るまで見届けるのが中園さんの拘りで、国際郵便を使って送る事は無いのだそう。僕もこの手で手渡すのだろう。
フィリピン航空のチェックインカウンターで4つの箱を託し、10時のフライトで出国する。


マニラでの乗り継ぎ含め8時間のフライトでダバオ空港、ダバオ空港からはMCL(Mindanao Children Library)の職員さんがKidapawanというMCLのある街まで送ってくれるらしい。

無事飛行機も離陸し、一路マニラへ。4時間のフライトは機内食を食べたり本を読んだらすぐ過ぎた。着陸の時、空港の柵ギリギリまでポツリポツリと見えた錆びたトタンの民家がひどく印象的だった。

教科書やネットでは感じられない経済的な「貧しさ」を直に感じたからだろうと思う。

フィリピンは赤道にほど近い場所にあるので飛行機の外は蒸し暑かった。検疫の手前でコロナウイルス対策の熱探知カメラがあって立ち止まるよう声をかけられる。

ここフィリピンでは僕ら日本人は検査の対象なのだと身をもって知った。

国内線に乗り換え、空港内のカフェで昼飯も兼ねてゆっくりしているとあっという間にダバオへの飛行機がやってきて、マニラ〜ダバオ間も滞りなく行く事が出来た。

17時すぎ、ダバオ着後、日本の空港からやって来た旅行客をチェックしていたのには驚いたけれど...マニラのように体温を測るわけでもなくすんなり検疫、税関を通り抜けることが出来た。

四つのダンボールを受け取り、MCLの迎えの車を待つ。が、待っても来ない、探しても居ない…と言うので中園さんが連絡を取ると、結局お互いの待ち合わせ場所が違っていたとの事。
1時間程遅れてしまったが会えてよかった。


運転手さんの名前はジェニーボーイ。32歳の家庭を持ったお父さんで、MCL出身、今もMCLのスタッフとして働いているそうだ。

寡黙で真面目そうな雰囲気だが、話すと以外に気さくな人だというのがわかる。日本にも運転手として行ったそうで、空港までの送り迎えは彼が担当してくれている。帰りもお世話になる予定。


日は沈み、オレンジ色に染まる山間の雲が夏を感じるからかどこか懐かしく感じた。

赤十字の寄付で貰ったという日産ナバラの荷台に箱をのせ、出発。ありえない交通密度の中をジェニーボーイの巧みな運転でスルスルと抜けていく。信号などほとんど無いに等しいのに、流石だ。巨大なモールと民家の明らかな差に違和感を覚えつつも、クラクションの鳴り響く夜のハイウェイ通り過ぎて行った。

小一時間たった後、休憩と夕食がてら、道沿いにある食堂に入った。名前をアンリミテッドUnlimited。ジェニーボーイ曰くご飯が食べ放題だからそう名ずけられたのだそうだ。
豚の角煮のような物と鳥の内蔵の炒め物、ご飯とコーラを頂く。味は、タイや中国のそれよりも沖縄のあまじょっぱい物に似ていた。

…と舌づつみを打っていると、妙にウェイトレスの女の子たちの目線がこちらを向いている事に気付く。コソコソ喋ったり、目が合うとキャーッ!と言ったり…

そんな対応に照れながらも、ジェニーボーイに訳を聞くもニヤニヤしてはぐらかされる…。
中園さんの注釈が入り、やっと理解したが、どうやらこちらの女性にとって恋愛は一大事業のようで、しかも、男性より女性の方が積極的と言ったしまつで、良さげな男性に手当り次第声をかけるのだそうだ。(ここで自分の事を「良さげ」と表現する事にとてつもない恥ずかしさを覚える)

そんなこんなで目をつけられた訳なんだけれど、こういったあからさまなナンパを受けた事もした事も無いので困ってしまった。
勇気を振り絞ってその女の子に話しかけてみると、どうやら歳は21歳、顔がカワイかったから気になった、のだそうだ。恐ろしやフィリピン人女性、、、彼女らの顔に、多少の気恥しさあれど、それくらいの度胸が僕にも欲しいものだ…

さて、そんな浮いた話はさておき、ジェニーボーイと中園さんにさきの食堂での事をいじられつつ再び出発。ISISゲリラあぶり出しの為の軍の検問を通ったり、割れた道路に地震の爪痕を見つつもMCLに到着した。

入り口には永田純子さんが持って行った飛び出し坊やと、彼女が亡くなる前の思いを受け、置かれた「じゅんこ地蔵」が置いてあった。
10時すぎだと言うのに男の子たちが数人出てきて荷物運びを手伝ってくれた。フィリピン人マネージャーのナナイさんに挨拶をして、今回使わせてもらう部屋へ。全体は木造、壁はバナナの葉っぱで出来ていて、最初はビックリしたけれど、しかし、これほど目に優しく通気性の良い建材は無いだろう。
2段ベッドの下段に寝転がると疲れがどっと溢れてきた。いつぞやかに就寝。